京都観世会5月例会
Monthly Performances (May)

公演日時:2019/05/26(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(能) 加茂        梅田嘉宏
(狂言)文荷        茂山七五三
(能) 夕顔 山ノ端之出  河村和重
       法味之伝
(能) 藤戸 蹉跎之伝   橋本雅夫
入場料:
一般前売 ¥6,000
一般当日 ¥6,500
学  生 ¥3,000

演目解説

加茂 かも
播磨国室の明神に仕える神職が、室とご一体であるという都の賀茂明神へ参詣すると、そこへ水汲みの女性が二人現れる。川辺に新しく祭壇が築かれ、白木綿に白羽の矢を立ててあるのを不審に思った神職がその訳を尋ねると、女は「この御矢は当社の御神体とも御神物とも崇め申しているものだ」と答え、乞われるままにこの矢の謂われについて「昔、この賀茂の里に秦の氏女という人があり、朝夕この川辺に出て水を汲み神に手向けていると、ある時川上から白羽の矢が一つ流れ来て水桶に止まったのを、取って帰り家の軒に挿しておくと知らぬうちに妊娠して男の子を産んだ。矢は天に上り鳴神となり、この子は別雷神となり、そしてその母君も神となり、これを賀茂三所の神というのだ」と語る。女は洛中洛外の川の名所を挙げつつ水を汲み神に手向け、やがて自分は神であると言い捨てて神隠れしてしまった。
〈中入〉
しばらくして女体の御祖神が現れ、つづいて別雷神も出現して雷鳴をとどろかして国土を守護する神威を示すのだった。
脇能の一つではあるが、前シテが女性であることや、川辺の情趣など他の脇能にはない風情も味わえる曲である。

夕顔  ゆうがお  山ノ端之出  やまのはので  法味之伝 ほうみのでん
豊後国の僧が都に上り、夕暮れの五条辺りにさしかかる。とある破屋の軒端から女の歌を吟ずる声が聞こえると、中より不思議な風情の女が現れ、初秋の夕暮れの無常感を謳う。僧が所の名を尋ねると、紫式部はここを何某の院としか記していないが、ここはかつて融大臣が住んだ河原の院で、後には夕顔の上が物の怪に襲われて命絶えた所であると女が答え、更に夕顔の巻は源氏物語の中でも優れて哀れなる個所だといって、光源氏と結ばれるきっかけとなった夕顔の花に似て儚くも美しく咲いた夕顔の身上を語りつつ、やがて女は消え失せる。
〈中入〉
所の者のすすめで僧が夜通し法華経を読誦していると、ありし日の装いの夕顔の上が現れ、恋のために非業の死を遂げた女の苦悩と、不気味な物の怪の執心を弔ってほしいと語り、荒れすさんだ庭を背景にその心情をうたい舞う。やがて僧の回向に救われた夕顔は、晴れやかな笑みを湛えながら、明け染める空の雲に紛れて消えて行くのだった。

藤戸  ふじと  蹉跎之伝 さだのでん
佐々木盛綱は備前国藤戸の合戦での先陣の功で賜った備前の児島へ新領主として乗り込み、訴えごとがあれば申し出よと領民に触れを出した。そこへ年たけた女が来て、罪もない我が子の漁師が盛綱によって殺されたことへの恨みを述べる。最初は語気荒く否定した盛綱も隠しきれず、去年三月二十五日、浦の男から藤戸の海を馬で渡れる浅瀬について聞いたこと、二人だけで密かに浅瀬の様子を見届けた後、他人に漏れることを恐れて男を刀で二回刺し、そのまま海へ沈めたことを打ち明けた。男を沈めた場所を教えると、老母は恨みの余り我が子を返せと激しく迫る。見るも哀れな老母の姿に盛綱は非を悔いて、弔いを約束し、老母を慰めて家まで送り届けさせる。
〈中入〉
弔いが始まり、盛綱自身も経を読むと、漁師の亡霊が水上に現れ、我が身の不運を嘆き、殺されたときの苦痛を述べる。藤戸の水底の悪竜となって祟りをなそうともしたが、思いがけない弔いを受けて成仏の身となったのであった。
「蹉跎之伝」では、キリの刺し殺されて海に沈められたさまを〈立廻リ〉の形でより強調して表現する。

出演者紹介
CAST

梅田嘉宏
Yoshihiro Umeda

茂山七五三
Shime Shigeyama
日本能楽会会員

河村和重
Kazushige Kawamura
日本能楽会会員

橋本雅夫
Masao Hashimoto
日本能楽会会員