<代替公演>京都観世会4月例会
Monthly Performances (April)

代替公演日時:2020/07/25(土・SAT) 13:00~
主催:京都観世会
演目:
(能)盛久 恐之舞     井上裕久
(能)誓願寺 乏佐之走   観世銕之丞
(能)葵上 梓之出 空之祈 杉浦豊彦
入場料:
本公演は新型コロナウイルス感染予防ガイドラインに沿った対策を講じる為、入場制限付きの事前申込制をとらせて頂きます。
詳細は、トップページのお知らせをご覧ください。年間会員様には事務局より申込案内を送付致します。

演目解説

盛久 もりひさ 恐之舞 かしこみのまい
 源氏に生け捕られて鎌倉へ護送されることになった平家の侍主馬の判官盛久は、土屋三郎の許しを得、信仰する清水観音に別れの参拝をし、輿に乗せられ東海道を下る。逢坂山を越え、瀬田の橋を渡り、老蘇(おいそ)の森、熱田の浦を過ぎ、「命なりけり」と歌に詠まれた小夜の中山、「変わる淵瀬」といわれる大井川を過ぎ、富士山の雪をおがみ箱根を越え、はるばる鎌倉に着いた。土屋から明日までの命と知らされた盛久は、土屋にこれまでの厚情を謝し、心静かに観音経を読誦する。土屋も聴聞し共に経文の功徳を讃える。盛久は少しまどろむうち夢の中で不思議な告げを受ける。朝になり由比ケ浜に引き出された盛久は、経を手に最後の座に着くが、太刀をふり上げた太刀取りの目が、経の霊光にくらみ、落した太刀は二つに折れた。頼朝はこれを聞き盛久を召し出し、夢の告げについて尋ねると、両者は同じ夢を見ていたと分る。その夢は、現れた老僧が、都の清水から汝のためにやってきた者だが安心せよ、と告げたというのであった。この奇跡の故に頼朝は盛久を許し、盃を与え舞を所望し、盛久はめでたく退出する。
 『平家物語』にある盛久処刑の時の奇跡を題材に、海道下りの叙景描写、経の読誦、奇跡の処刑場面、男舞、を通して、死に臨んだ鎌倉武士の男気を描く。

誓願寺 せいがんじ 乏佐之走 ぼさのかけり
 熊野詣をしていた一遍上人は、熊野権現から御札を諸国に弘めよとの霊夢を受け、都・誓願寺へ上って御札を弘めていると、一人の女が現われて御札を受け、「六十万人決定往生」とあるのは往生の人数に限りがあるのかと尋ねる。一遍上人は、如来の光明は遍く照らして、済度の人数に限りはないと教える。女は喜んで弥陀の名号をくり返し唱え、誓願寺の額を取り除け、上人の手で南無阿弥陀仏という六字の名号をかけてほしいと頼み、和泉式部と名を明かして消える。          〈中入〉
 上人が六字の名号を書きつけ、額をかけると、やがて異香薫じ、花降り、音楽聞こえ、歌舞の菩薩となった和泉式部が、諸々の菩薩衆とともに姿を見せ、誓願寺の由来を語ったのち舞を舞い、来迎した二十五菩薩も六字の名号の額を礼拝するのであった。

葵上 あおいのうえ 梓之出 あずさので 空之祈 くうのいのり
 左大臣の息女で光源氏の正妻である葵上に、正体のわからぬ物の怪が憑いた。朱雀院に仕える臣下が照日という梓巫女(弓を鳴らして口寄せをする霊力者)に物の怪を呼び出させたところ、いわくありげな貴女が破れ車に乗って現れる。それは六条御息所の生霊で、かつて賀茂祭で葵上の一行と車争いをしたとき受けた屈辱への恨みと、愛する源氏の足が遠のいている憂さから出てきたものだった。先の東宮妃としてこよなく時めいていた自分が、何の因果か今では人待つ日影の身に落ちぶれている。臥せっている葵上(小袖で表現される)に激しく怨讐をぶつけた御息所は、ついには我を忘れて後妻打ちに及ぶ。葵上が生きている限りは源氏の愛も我が元に戻らないと思いつめ、更に破れ車に乗せてあの世へ連れ去ろうとする。         〈中入〉
 怨念の凄まじさに臣下は恐れをなし、従者に命じて行法中の横川の小聖を呼んで来させた。苦しむ葵上を前に小聖が数珠を揉んで祈祷を始めたところ、御息所の生霊が悪鬼と変じて現れる。強い法力に負けじと打杖を振り上げる怨霊であったが、己の妄念を悟ったのかやがて怒りを和らげて観念し、成仏した身となり去って行く。

出演者紹介
CAST

井上裕久
Inoue Hirohisa
日本能楽会会員

観世銕之丞
Kanze Tetsunojo
日本能楽会会員

杉浦豊彦
Sugiura Toyohiko
日本能楽会会員