夏の素謡と仕舞の会

公演日時:2020/07/12(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(素謡)鉢木        河村和重
(素謡)通盛        越賀隆之
(素謡)野宮        観世清和
(素謡)山姥        杉浦豊彦
入場料:
一般前売 ¥4,500
一般当日 ¥5,500
学  生 ¥2,500

演目解説

鉢木 はちのき
 鎌倉時代中期が舞台。鎌倉へ向かう旅僧(実は最明寺入道時頼)が上野国で大雪に見舞われ、とある夫婦に一夜の宿を頼みます。暖を取るため、宿の主は秘蔵の鉢木(盆栽)を火に焚いてもてなしました。常人とは思えずその名を尋ねると、佐野源左衛門常世と名乗り、一族に横領されて零落しているものの、いざ鎌倉に大事あらば馳せ参ると志を述べます。舞台は鎌倉へ移り、あれから間もなくして、鎌倉で兵が集められることになりました。執権である時頼は兵の中から常世を探し出し、過日の旅僧は自分であったと告げ、彼の忠誠を賞して旧領を返させ、さらに鉢木のもてなしの報謝に、その木に縁のある梅田・桜井・松井田の三ヵ庄を与えます。これを賜った常世は歓喜して郷里へ帰っていくのでした。
通盛 みちもり
 夏の阿波国が舞台。井阿弥原作、世阿弥改作。鳴門にて一夏を送る僧が、毎夜海辺で平家一門の跡を弔っています。そこへ御経を聴聞しようと女と老人が乗った舟が漕ぎ寄せてきます。暗闇の中、舟の篝火の光で読経した僧はこの浦でのことを尋ねます。二人は、とりわけ小宰相(こざいしょう)の物語―― 一の谷の源平合戦で、夫通盛が果てたことを知った小宰相の局は絶望し、鳴門の海に入水したと語るや、二人は突如海へ飛び込み消え失せます。僧が回向を続けていると、二人が在りし日の姿で現れ、一の谷の合戦前夜の悲しい別れ、そして通盛が木村源五重章に討たれた最期の有様を再現し、読誦のおかげで成仏の身になったと喜び消えていくのでした。
野宮 ののみや
 九月七日、嵯峨野宮が舞台です。作者は金春禅竹ともいわれます。諸国一見の僧が嵯峨野宮を訪ねると、榊を手にした女が宮所を清め、今日は人知れず神事を行うので早く帰ってほしいといいます。その訳は、光源氏がこの野宮に六条御息所を訪ねた日であるからだと教えます。彼女の淋しい生涯を語り、そして自らが御息所であると明かして、鳥居の陰に姿を消します。僧が夜もすがら跡を弔っていると、破れ車に乗った御息所の霊が現れ、車争いの様を再現し、妄執を晴らし給えと僧に頼みます。そして、いつまでも成仏しない身は神の意に添わぬことを述べつつ、車に乗って消えていくのでした。同じ六条御息所を扱った「葵上」とは対照的で、執心の晴れやらぬ秘めた激しさと、艶やかさが表現される作品です。
山姥 やまんば
 越後国が舞台。世阿弥作ともいわれます。都に、山姥の曲舞を得意とする百萬山姥と呼ばれる遊女がいました。従者を連れて信濃国・善光寺に参る途中、上路越にさしかかると、突然日が暮れたように暗くなり一行は困惑します。そこに不思議な女が現れ、宿を貸そうと庵に案内します。庵に着いた一行に、女は、自分こそが山姥であると明かし、月の出るころに謡えば真の姿を現そうと言って姿を消します。すると、まわりは瞬く間に明るくなります。夜が更け、一行の前に現れた異様な姿の山姥は、約束通り舞い、山姥の本性を語ります。そして深山の光景、山姥の境涯を語り、山また山を廻りながら姿を消すのでした。

出演者紹介
CAST

河村和重
Kawamura Kazushige
日本能楽会会員

越賀隆之
Koshika Takayuki
日本能楽会会員

観世清和
Kanze Kiyokazu
日本能楽会会員

杉浦豊彦
Sugiura Toyohiko
日本能楽会会員