京都観世会12月例会 第二部
Monthly Performances (December)

公演日時:2020/012/20(日・SUN) 14:30~
主催:京都観世会
演目:
(能)通小町 雨夜之伝   井上裕久
(能)熊坂         松野浩行
入場料:※年間会員様限定の公演です。

本公演は新型コロナウイルス感染予防ガイドラインに沿った対策を
講じた公演とさせて頂きます。

演目解説

通小町 かよいこまち 雨夜之伝 あまよのでん
 八瀬の山里で夏籠りをしている僧のもとへ、毎日木の実を届ける女があった。僧の問いに答え、木の実の数々を語った後、実は私は市原野に住む姥、跡を弔ってほしいと言って消え失せた。これは小野小町の幽霊であろうと確信した僧は、市原野へ赴き、その跡を弔う。小町の幽霊は再び現れ、僧の弔いを謝し、戒を授け給えと望む。と、その後より、戒を授けることはならぬ、はや帰れと言う者がある。小町に心を寄せ、九十九夜までも小町のもとへ通い、終に命絶えた深草の少将の幽霊である。僧の所望に応え、百夜通いを再現してみせる少将。共に恋の妄執深き身ではありながら、少将が飲酒戒を保った縁で、二人は成仏する。
 少将の百夜通いを「まなぶ」ことを軸にしており、大和申楽得意の「鬼」と「ものまね」の要素が色濃く残っている。また女をツレに伴い、恋の妄執を見せる「船橋」「女郎花」「錦木」などへの影響も興味深い。「鬼」から「霊(りょう)」、「修羅」、「遊楽」などへと様々に発展してゆく原点のような曲である。

熊坂 くまさか            
 旅僧が美濃国、赤坂にさしかかった時、一人の僧に呼び止められる。「今日はさる者の命日」ゆえ弔ってほしいと言われ、その僧の草庵に案内される。旅僧が持仏堂に入り勤めを始めようと辺りを見ると仏像などはなく、壁には大長刀、拄杖ではなく鉄の棒、その他武具がびっしりと置かれている。不審に思い問うと、この辺りは、山賊・夜盗が出没するので、その時には「ここをば愚僧に任せよ」とて通行人を危機から救うのだと言う。そして僧の身ながらあさましいことだなどと語るうち「おやすみあれやお僧たち、我もまどろまん」と寝室に入るかに見えた。と、今まで居たはずの庵室は草むらとなり、松の木陰に居たのだった。            〈中入〉
 旅僧は所の者から、ここで討たれた熊坂長範のことを聞き、さては庵主の僧はその仮の姿であったかと思い、読経し回向する。やがて熊坂長範の亡霊が長刀をかたげてノッシノッシと現れ、ここで吉次一行を襲ったが、逆に牛若に討たれたことを仕方話で物語り、また回向を頼み松陰に消えて行く。
 シテ、ワキ同装で現れるのは他に例がない。僧姿の二人が真っ暗な堂の内におり、あるはずの仏像などなくその壁一面に武具がある。このなんとも不気味な情景が前場の舞台。 後場、熊坂長範が仕方話で物語る。はじめは床几に腰掛けて語り、いつしか当時の映像がオーバーラップする辺りから立って実際に長刀に長刀をつかう。熊坂がくり出す長刀の先には躍動する牛若が見えなければならない。また単に荒っぽいだけの曲ではなく、中入前やラストシーンでは、どことなく哀愁がただよう。熊坂長範は六十三歳であった。

出演者紹介
CAST

井上裕久
Hirohisa Inoue
日本能楽会会員

松野浩行
Matsuno Hiroyuki