京都府次世代等古典芸能普及促進公演

井上定期能 3月公演

公演日時:2021/03/07(日・SUN) 13:00~
主催:井上定期会
演目:
(素謡)羽衣          井上裕久
(能)田村 替装束       𠮷田篤史
(狂言)昆布売         茂山千五郎
(能)遊行柳 青柳之舞     勝部延和
入場料:
前売券     ¥3,800
当日券     ¥4,500
学生券     ¥2,000
五枚綴券    ¥17,500

演目解説

羽衣 はごろも
 駿河国三保の松原に住む白龍という漁師が、釣に出かけ、春ののどかな浦の景色を眺めていると、一本の松に美しい衣が掛かっている。家宝にするため持ち帰ろうとすると、一人の女が現れて呼び止め、それは自分のものだから返してほしいと言う。女は天人で、その衣が天の羽衣であることを聞かされた白龍は、ますます喜び、国の宝にすると言い、返そうとしない。天人は羽衣がなくては天に帰れないと、空を仰いで嘆き悲しむ。その姿を哀れに思った白龍は、羽衣を返すかわりに、天人の舞楽を見せてほしいと頼む。天人は喜び、舞楽を見せるが、衣がなくては舞えないと言うと、白龍は、衣を返すとそのまま舞わないで天へ逃げるのだろうと疑う。それに対し天人は「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と答え、白龍は「あら恥かしや」と羽衣を返す。やがて天人は羽衣を着し、月世界における天人の生活の面白さや、三保の松原の春景色を賛えた舞を舞いながら、天空へと上ってゆく。
素謡・・・能の謡部分を囃子や狂言をいれずに、紋付・袴にて正座して謡います。

田村 たむら  替装束    かえしょうぞく
 東国の僧が都へ上り清水寺へ着く。折しも満開の桜を眺めていると、一人の童子が箒を手に現われる。僧の問いに童子は、清水寺建立の縁起を詳しく語り、またあたりの名所を教え、月夜に桜の風情を楽しむ。僧が名を尋ねると童子は田村堂の内陣へと姿を消す。夜もすがら僧が桜の木陰で読経していると、堂々たる武将姿の坂上田村麻呂の霊が現われ、勅命を受けて鈴鹿山の賊を討伐に出陣し、千手観音の助けにより敵を滅ぼした様子を物語る。
「替装束」(特殊演出)の節は、文字通り装束が替わり、前シテは常の童子姿、または裳着胴姿に喝食の面、後シテは狩衣を肩上げの姿に、天神系の面となり、型も常と変る。

遊行柳 ゆぎょうやなぎ  青柳之舞   あおやぎのまい
 諸国遊行の聖が、上野の国から奥州へと志し、白川の関を越えて新道を行こうとすると、老人が一行を呼び止め道案内をする。老人は昔の街道を教え、名木の朽木の柳へと聖を誘う。聖の問いに老人は、昔、西行法師が「道の辺に 清水流るる柳蔭 しばしとてこそ立ちとまりつれ」という歌を詠んだことをもの語り、聖から十念を授かると、朽木の柳の古塚に消え失せる。聖は所の者に朽木の柳のいわれを尋ね、夜もすがら回向をする。やがて念仏を唱える聖の夢に老柳の精が現れ、非情の草木まで成仏することの出来る念仏の功力を賛え、柳の故事を述べ、報謝の舞を静かに舞う。夜が明けると、もとの柳が残るだけであった。
「青柳之舞」(特殊演出)の節は、序之舞の格段を、春・夏・秋になぞらえ、そのうちの初段または二段で上げてしまうことを春だけで終わるとし、青柳の春にたとえる。