夏の素謡と仕舞の会

公演日時:2021/07/11(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(素謡)賀茂        分林道治
(素謡)安宅 勧進帳    井上裕久
(素謡)鸚鵡小町      観世清和
(素謡)藤戸        大江又三郎
入場料:
    一般前売   ¥4,500
    一般当日   ¥5,000
    学  生   ¥2,500

演目解説

賀茂 かも
 初夏の京都が舞台。播磨国の室の明神に仕える神職が、室とご一体であるという賀茂明神へ参詣します。神職は川辺に新しく祭壇が築かれ、白木綿に白羽の矢が立ててあるのを不思議に思い、ちょうどそこへ現れた水汲みの女性二人に訳を尋ねると、「この御矢は当社の御神体とも御神物とも崇め申しているもの」と答えます。ある時、流れてきた白羽の矢を持ち帰り家の軒先に挿すと、知らぬうちに子を授かり男子を産み、矢は天に上り鳴神に、この子は別雷神に、その母君も神となったのだと、賀茂三社の縁起を語ります。女は洛中洛外の川の名所を挙げつつ水を汲み神に手向け、やがて自分は神であると言い神隠れします。やがて女体の御祖神、つづいて別雷神が出現し、雷鳴をとどろかせ国土を守護する神威を示すのでした。
安宅 あたか  勧進帳   かんじんちょう
 観世小次郎信光作。平家討伐の功により都を守護していた源義経は、兄頼朝と不和になり、都を落ち、奥州藤原氏を頼って逃走しています。主従十余人は山伏姿に身をやつし、安宅(現石川県)の関へ。一行は、義経を剛力(荷持ちの人夫)に仕立て、東大寺再興の勧進の山伏と偽って通過しようとしますが、関守富樫(とがし)何某(なにがし)が許しません。即身即仏の山伏を討てば熊野権現の天罰が下ると言って一行が数珠を揉むと、関守は畏れ、「勧進帳」を読めといいます。弁慶が即興で巻物を読み上げ一行は通されますが、今度は強力が止められます。再び弁慶の機転によって終に一行は通過しますが、関を離れて安堵しているところへ、先の非礼を詫びるため関守が一行に追いつき酒盛りとなります。弁慶は叡山で手習った延年で応え、早々に奥州へ急ぐのでした。
鸚鵡小町 おうむこまち
 近江国(現大津市)が舞台。和歌の道を愛する時の帝・陽成院は、歌を選び集めようと思い立ちますがなかなか名歌が集まりません。そこで、かつて並びなき和歌の名手であった小野小町のもとへ新大納言行家を向かわせます。芙蓉(蓮の花)にたとえられるほど美しかった小町ですが、今は貧しい暮らしの百歳の老女。目は霞んで文字も定かに見えず、帝が行家に託した和歌を行家が読んで聞かせます。
 ――雲の上は ありし昔に変わらねど 見し玉簾の 内やゆかしき――
宮廷は今も恋しいかと尋ねる歌。歌を詠む気力も失せていた小町でしたが、鸚鵡返しの古法で返歌し、行家に歌の道を語ります。そして往時の栄華を懐かしみ、かつて見た在原業平の舞い姿を追憶し、懐旧の舞を舞います。やがて日暮れとともに帰ってゆく行家を見送ると、小町は杖にすがりつつ庵に帰るのでした。

藤戸 ふじと
 源平合戦の藤戸の合戦にて、馬で海を渡り先陣の大手柄をたて、恩賞として備前(現岡山県)の児島を賜った源頼朝の家臣・佐々木盛綱。意気揚々と新領主として赴いた盛綱の前に年たけた女が現れ、罪もない息子を盛綱に殺されたと恨みを述べます。最初は語気荒く否定した盛綱でしたが、大手柄の陰には、昨年三月、土地の漁師に藤戸の浅瀬について教わったことがあり、口封じの為にその漁師を刀で刺しそのまま海へ沈めたことを打ち明け、その場所を示します。息子の最後の様子に泣き崩れわが子を返せと激しく迫る老母に、盛綱は非を悔い、男の供養を約束します。その夜、盛綱自身も読経すると漁師の亡霊が水上に現れ、我が身の不運を嘆き、殺されたときの苦痛を述べ、藤戸の水底の悪龍となって祟りをなそうともしたが、思いがけない弔いを受けて成仏の身となったと告げるのでした。

出演者紹介
CAST

分林道治
Wakebayashi Michiharu
日本能楽会会員

井上裕久
Inoue Hirohisa
日本能楽会会員

観世清和
Kanze Kiyokazu
日本能楽会会員

大江又三郎
Oe Matasaburo
日本能楽会会員