井上定期能 12月公演

普及促進特別公演

公演日時:2021/12/04(土・SAT) 13:00~
主催:井上定期会
演目:
(能) 半 蔀      橋本擴三郎
(狂言)胸 突      茂山忠三郎
(能) 山 姥      浦部 幸裕
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500

演目解説

半蔀 はじとみ
 都、紫野雲林院の僧が、夏の修行も終わり近くなったので、その期間仏に供えた花々の供 養を行う。するとどこからともなく一人の女が現れて花を捧げる。僧が名をたずねると、た だ夕顔の花とだけ答え、名を明かさない。僧が更に問うと、五条あたりの者とだけ告げ、花 の陰に消え失せる。不思議に思った僧が五条あたりへ弔いに行くと、荒れ果てた一軒家に、 夕顔の花が咲いており、半蔀を押し上げて一人の女性が現れる。女は、源氏と夕顔の花の縁 を物語って舞を舞い、夜明けを告げる鐘と共に僧に別れを告げ、半蔀の中へと消えてゆく。
 後場、半蔀屋の作り物を常座(演出によっては一ノ松)に出す。後シテは半蔀戸を押し上 げて姿を現わし、最後にふたたび作り物へ入って留める。本曲は、主役が夕顔の上か夕顔の 花の精か、いずれとも判然としないところに特色を持つ。夕方に白い花を咲かせる夕顔、そ のほのかなはかなさを描きつつ、『源氏物語』夕顔の巻を巧みに取り入れて、恋の喜びを描 いた愛くるしい作品である。

山姥 やまんば
 都に、山姥の山廻りの曲舞 くせまい を得意とし、百萬 ひゃくま 山姥 やまんば と呼ばれる遊女があり、善光寺参詣を思 い立ち越後(新潟)と越中(富山)の国 境 くにざかい 、境 川 さかいがわ に着く。阿弥陀如来が通られたという上路越 あ げ ろ ご え にさしかかると、急に日が暮れてしまう。そこへ一人の女が現れて宿を貸し、山姥の歌を所 望し、山姥について語る。百萬山姥が謡を謡おうとすると女はそれを制し、夜ふけに謡えば、 真の姿で現われようと言い、自分こそ山姥であると告げて消え失せる。
 同行の里人(アイ狂言)が山姥の謂われを語るうちにやがて夜が更け、山姥が鬼女の姿で 現れ、遊女の謡に合わせて移り舞を舞う。春は花を尋ね、秋は月を求め、冬は雪に興じてと、 山廻りの様を見せて去ってゆく。
 山姥とは自然そのものであり、人間の象徴とも考えられるのではないだろうか。自然や宇 宙に対しての畏敬の念であり、山廻りを、六道に輪廻するすべての生きとし生けるものの宿 命の象徴として表現し、苦行の連続である人生の姿とも考えられる。加えて、善悪、邪正、 苦楽、何事も表裏一体であるということをこの怪異な妖精は説いているのかもしれない。