井上定期能 6月公演

公演日時:2023/06/17(土・SAT) 12:45~
主催:井上定期会
演目:
(解説)        井上 裕久
(能) 花 筐     橋本 光史
(狂言)茫々頭     善竹 隆司
(能) 雲林院     𠮷田 潔司
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500
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演目解説

花 筐 はながたみ
 越前の国(福井県)味真野(あぢまの)にいた男大迹(をおあとべ)ノ皇子は、皇位継承の為、急に上洛することとなる。皇子は使者に、寵愛していた照日ノ前(てるひのまえ)のもとへ別れの文と花筐を届けさせる。突然の別れに照日ノ前は形見の花筐を抱いて悲しみの中に我が家へと帰ってゆく。
 その後、皇子は継體(けいてい)天皇となり、大和国(奈良県)玉穂(たまほ)に都を移し、ある日、紅葉狩の御幸に赴く。一方、恋慕のあまり心が乱れた照日ノ前は侍女を伴い旅に出、都へと着き、帝の行列に行き逢う。しかし朝臣に見苦しい狂女とばかり払い退けられ、花筐を打ち落とされてしまう。照日ノ前は、それは帝の花筐であると朝臣を咎め、皇子がまだ味真野にあった時に、毎朝天照大神に花を捧げ世の安寧を祈った謂われを語り、恋のかなわぬ悲しみを嘆く。続いて帝の仰せにより、御車の前で李夫人(り ふじん)の故事を語り舞い、思慕の情を訴える。やがて帝が花筐に気付き、その狂女が照日ノ前であることがわかり、元通り側近く召し使うとの宣旨に、喜んで皇居へと向う。
 恋慕の狂乱を主題とした曲であるが、その相手が時の帝であること、遠国の者とはいえ、自身も侍女を伴っている程であることなど、狂女物の中でも最も品位が感じられる。 「李夫人の曲舞(くせまい)」は世阿弥の父、観阿弥作といわれ、漢の武帝が愛した李夫人の死を嘆き、甘泉殿(かんせんでん)の壁にその姿を描かせて朝夕それを眺め、また反魂香(はんごんこう)を焚いてその面影を呼び戻したという哀話を曲舞にしたもので、照日ノ前は自らの気持ちと重ねてこれを舞う。

雲林院 うんりんいん
 芦屋の里に住む公光(きんみつ)は、幼少から「伊勢物語」を愛読していた。ある夜不思議な夢を見、都へ上り雲林院に着くと桜が美しく咲いている。公光がその枝をひとつ折ると、老人が現れてそれを咎める。その後二人は互いに桜を詠んだ古歌をひいて語り合う。公光は老人の尋ねに答え「伊勢物語」に対する熱愛ぶりを語り、霊夢にひかれて都へ来た由を告げる。すると老人は、自らが業平であることをほのめかし、夕霞の中に姿を消す。
 公光は、北山辺の者に『伊勢物語』のこと、また業平について尋ねる。やがて公光が花の木陰で仮寝をすると、その夢に業平が現れて『伊勢物語』の中にある業平と二条の后の恋を物語り、さらに昔を偲んで夜もすがら舞を舞う。やがてその夢も覚め、業平の姿も消えてゆく。
 後シテ(業平)は、初冠(ういかむり)をつけ指貫(さしぬき)・単衣狩衣(ひとえかりぎぬ)姿で、業平が在五中将(ざいごちゅうじょう)といわれたその中将の名に由来する面・中将をかけ、男装ながら序之舞を舞う。