井上定期能5月公演

公演日時:2024/05/18(土・SAT) 12:45~
主催:井上定期会
演目:
(解説)        井上 裕久
(能) 羽 衣     浦部 幸裕
      和合之舞
(狂言)寝音曲     茂山忠三郎
(能) 藤 戸     橋本擴三郎
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500
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演目解説

羽衣 はごろも  和合之舞   わごうのまい
 駿河国三保の松原に住む白龍という漁師が、釣に出かけ、春ののどかな浦の景色を眺めていると、一本の松に美しい衣が掛かっているのを見つける。家宝にするべく持ち帰ろうとすると、一人の天人が現れて呼び止め、それは自分のものだから返してほしいと言う。その衣が天の羽衣であることを聞かされた白龍は、ますます喜び、国の宝にしようと言って返そうとしない。天人は羽衣がなくては天に帰れないと、空を仰いで嘆き悲しむ。その姿を哀れに思った白龍は、羽衣を返すかわりに、天人の舞楽を見せてほしいと言う。天人は喜びながらも、舞楽を見せるには衣がなくては舞えないと言うと、白龍は、衣を返すとそのまま舞わずに天へ逃げるのだろうと疑う。それに対し天人は「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と答え、白龍は「あら恥かしや」と羽衣を返す。やがて天人は羽衣を身にまとい、月世界における天人の生活の面白さや、三保の松原の春景色を賛えた舞を舞いながら、天空へと上ってゆく。
 「和合之舞」の小書(特殊演出)は、序之舞と破之舞を和合する意で、序之舞の終わりが破之舞の位となり、ワカを略し、舞のあと「東遊びの数々に」となる。緩急が加わり、より劇的な演出となる。

藤戸 ふじと
 藤戸の先陣を果たした功により、恩賞として賜わった児島へ佐々木盛綱は従者を伴い着任し、訴訟の申し出を受け付ける。そこへ一人の女が現われ、子を殺された恨みを述べる。はじめは身に覚えがないと言う盛綱も、女の強い訴えに、去年三月、先陣の功を独り占めしようと、馬で渡れる浅瀬を教えた若い漁師を殺害し海に沈めたことを物語る。我が子を返せと激しく迫る母を、盛綱の従者が慰め、私宅へと送り届ける。やがて盛綱が法要を営むと、海上から漁師の霊が現われて恨みを述べ、刺し殺されたさまを再現するが、弔いを受けて成仏する。
 前場、盛綱(ワキ)が語る場面では、盛綱自身の残忍な行為がリアルに語られ、ワキ方の重要な演技とされる。また漁師の母(シテ)が盛綱に強く迫る場面は、盛綱の刀を奪い自害する心であるともいわれ、曲中の焦点となっている。庶民の立場から、支配階級の理不尽さへの反抗を扱った作品として珍しい例である。